更年期なのかわからないが、昨年あたりから自律神経がぶっ壊れている自覚がある。
急に動悸がしたり、息が苦しくなったり、眠っていてもやけに鮮やかな夢で何度も目が覚めたり。常に身体が興奮している感じなのだ。そしてまずいことに、血圧も高い日が増えてきた。
血圧ってのはとても厄介で、気にすれば気にするほど高くなる。血圧を測るという行為自体がプレッシャーになっていき、測るぞと思うだけで緊張し血圧が上がるようになってくる。
これはまずいぞ、と思いつつも「高血圧なんて年寄りくさくて恥ずかしい」となかなか受診する気になれない。頭の固い医者に当たれば、有無を言わさず降圧剤を飲み続ける生活に突入するのは目に見えている。私は悩んだ。数字だけを見て、正常値にすることをゴールとするような医療にはかかりたくない。もっと私という人間全体を見て、本来の状態へと調律するサポートをしてくれるようなドクターはいないだろうか?と。
chatGPTを使いながら検索するうちに、アントロポゾフィー医療という言葉に出会った。
アントロポゾフィー医学では、人間を身体、心、精神の統合された全体性として捉え、各個人の生き生きとしたあり方を尊重します。
それは従来の医学を否定するものではなく、それらを補完しながらホリスティックなアプローチで拡張します。https://j-paam.org/
いいかもしれない。
近所でアントロポゾフィー医療を行っている医療機関を検索し、藁にも縋る気持ちで受診してみることにした。
緊張しながら向かった初診の日。内科のドクターが身体状況だけでなく、一見無関係な生い立ちやその他の出来事まで含めて1時間以上のヒアリングを行なってくれた。もうここからして「私という人間を丸ごと理解しよう」という意志を感じる。血圧やその他体調の悩みに関しても、短絡的に数値を改善することを目的とせず、私が私として人生を歩んできた中で、何がその症状を引き起こしているのか、そこにアプローチしてくことが目的として設定された。
まずは私の中にある、身体や今の自分に対する過剰なほどの不安感と、その根本にある幼い頃からの緊張感を緩めていくために、鉱物由来の飲み薬と軟膏が処方され、さらにこのタイトルにもなっている「アインライブング」という謎の施術を数回にわたって受けることとなった。そして今日がその1回めであった。
胎内を思わせるような温かいコーラルピンクの部屋に通され、まずはフットバスで温まる。その後、タオル時のローブに着替え、アロマオイルを用いた施術へと移る。施術してくれるのは、アントロポゾフィーを学んだ看護師さんで、その手技は単なる医療的なものではなくとても中立的で優しいものだった。ぐいぐい押すようなマッサージではなく、ひたすら何かにそうように、オイルを塗り込んでいく。その手には「ここが悪いから良くせねば」と言ったジャッジがない。今までたくさんのスピ的施術を受けてきたが、そのどれとも違う。感動も解放も解釈も手放しもいらない。ただそのまま、感じるまま、感じないまま、自分の身体と共にあればいい。そんな不思議な時間。
最後に赤ちゃんのように毛布に包まれて20分くらい休息する。起きているような眠っているような不思議な意識状態のうたた寝。目が覚めると、何がどう変わったのか頭では全くわからないが、なんだかふわふわと全体が緩んでいる感覚がある。
きっと頭では及ばない層に何かが届いたのだろう。
そう自分を納得させる。そして思う。
数値の上げ下げに躍起になる現代医療が嫌いだ、と思っていたけど、誰よりも結果を気にしていたのは自分だったのだな。数値が正常でないこと。やったことの結果が目に見える形で見えないこと。そういう一つ一つに不安と不満を感じて生きていたのだ。でも、もうそんな窮屈な世界から抜け出たいから、今、こういう世界に足を踏み入れている。きっとそういうことだ。
次回は2週間後。何を感じるのか、感じないのか。どんな自分に出会うのも、楽しみだと思う。
そしてなぜかわからないが、帰りに寄ったスーパーで、レジの人にTシャツを「素敵ね」って褒められた。世界が少しやわらなくなった気がした。


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